民商法の改正について(4)

今回は、民商法の改正についての最後のブログになります。これまでと同様に、赤字の部分が今回修正される箇所になります。

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729条

728条の抵当権の実行として、他の登記済みの抵当権や優先権が当該物件にないときは、抵当権者は、競売に代えて、抵当物件の取得を下記の条件により裁判所に求めることが出来る。
(1)主債務者が5年間利息を支払わないとき。
(2)抵当物件の価値が未払いの債権額以下であることを抵当権者が裁判所に証明したとき。

729/1条

債権の期限が到来したときは、他の登記された抵当権や優先権が当該物件にないときは、抵当権設定者は、裁判所の命令を得ることなく、抵当権者に対して、書面により、抵当物件の競売を求めることが出来る。抵当権者は、当該通知を受領した日から1年以内に、抵当物件の競売を完了しなければならない。

抵当権者が、競売を完了出来なかった場合、抵当権設定者は、1年後以降の主債務者からの利息及び遅延損害金、その他の課徴金について、責任を免除される。

競売による純益は、全債務及び付加金に割り当てられ、余剰金がある場合は、抵当権設定者または受領権者に支払われる。純益が請求権よりも少ない場合は、733条の規定による。抵当権者が、他人の為にその資産を提供した者である場合は、727/1条に規定されている限りにおいて、責任を負う。

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抵当権設定者に、早期の競売を求める権利を認める規定が新設されました。これにより、抵当権設定者の負担が増大することを防ぎ、また、余剰金があれば、受け取ることが出来るということが明確になりました。

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735条

抵当権者が、抵当権を抵当物件の譲受人に対して実行する場合は、抵当権者は事前の書面による通知を、抵当権実行の60日以上前に送らなければならない。

737条

譲受人は、いつでも抵当権の消滅請求をすることが出来る。但し、抵当権者から抵当権実行の通知を受けた場合は、受領の日から60日以内に消滅請求をしなければならない。

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抵当権実行の際の、物件の譲受人に対する通知期間が長くなりました。

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744条

抵当権は以下の場合に消滅する。
(1)担保した債権が時効以外の事由により消滅したとき。
(2)抵当権設定者に対する書面により抵当権が免除されたとき。
(3)抵当権設定者が免責されたとき。
(4)抵当権の消滅請求がされたとき。
(5)抵当物が抵当権実行としての裁判所命令による競売、抵当権消滅請求、または、729/1条による競売のあったとき。
(6)抵当権実行としての抵当物件取得があったとき。

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729/1条の追加に伴う変更です。

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以上のとおり、抵当権設定者から早期競売を求める権利が明記され、遅延損害金が積み上がる前に競売をして、余剰金を受け取ることが出来ると明記されております。抵当権設定者を、より保護する為の規定といえるでしょう。

これで、今回の保証人及び抵当権に関する民商法の改正についての説明は以上になります。主に保証人や抵当権設定者を保護する規定が設けられ、弱者保護の観点からの改正といえます。著しい経済発展の中で、これまで負担を強いられた保証人や、抵当権設定者が多かったのかも知れません。それらを保護し、より平等な社会を実現する趣旨の改正といえるでしょう。

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